街の本屋さんの再生について(2/2)~第2部 最近の展開事例~ここ最近、脚光を浴びている書店について


梟書茶房入口にはサイズも厚さもさまざまな約2,000冊の本がずらりと。本はすべて表紙が同じカバーで袋とじされていて、買うまで本の中身がわかりません。

1部の「最近の展開事例~ここ最近、脚光浴びている書店について」では、16の事例を紹介しました。


それぞれの書店の立地・取り組みは異なりますが、16の書店に共通している点があると思います。


その共通項こそが書店存続のキーワードであり、「改善はしたいが、何をどうしていい良いかわからない」とお悩みの書店主・オーナー様のヒントになると思います。(以下、書店名等全て敬称略)



2部 脚光書店群に見る共通項~書店存続のキーワード



◆キーワードその1 収入源を考える


ここでは16の書店、それぞれの「本の販売代以外の主な収入源」をあぶりだしました。なお、これは記事から推測したMRDの独自解釈によるものですので、記事に表れていない別の強力な収入源がないとも限りません。


1. 文喫=入場料(¥1,500)、食事代(例えば、牛ほほ肉のハヤシライス¥1,080 / とろけるカスタードプリン¥580)


2. かもめブックス=ギャラリーとカフェ、ワークショップ代


3. ブルックリンパーラー飲食代、イベント。書店というよりバーとかライブ空間


4. BOOK AND BED TOKYO=宿泊代金、利用代金


5. ポルベニールブックストア=イベント(今後は物販も扱う予定)


6. いわた書店=書籍セレクトサービス代(MRD命名。要するにコンシェルジュ的なパーソナルサービス)


7. 八戸ブックセンター=イベント、物販 (市営のため基本的には税金で賄われている?)


8. 往来堂書店=イベント、物販


9. BOOKS 青いカバ=イベント、物販


10. ひるねこBOOKS=イベント、物販(本と雑貨)


11. B&B=イベント代、飲食代(主にビール)、物販(什器や家具を販売。=ショールーム機能を果たす)


12. 天狼院書店=ワークショップ代(「ゼミ」や「部活」といったリアルイベント)、飲食代


13. 本と珈琲梟書茶房=珈琲代(カフェ代金)


14. 定有堂書店=イベント


15. 隆祥館書店=イベント


16. ホホホ座=イベント、物販


当たり前の推察になりますが、こうやって見るとまず、どこも「純粋に本だけを売って儲けよう」とは思っていないことが想像できます。むしろ、「陳列している本が売れなくても経営が成り立つ」ように、書籍販売以外の収入源(複数の柱)をつくっています。


中でも最大の特長は「書店」を「人の集まる場(空間)」として捉えていること。それにより、イベント開催によるイベント収入(※)、ランチや食事・コーヒーなどドリンクを提供するによる飲食代金、本以外の物販(トートバッグなど雑貨類)による収入が見込めます。


※ イベント収入:イベント主催者からの収入(場所貸し代金)や、イベント参加者からの収入(参加費・インベント時飲食代・物販など)。店舗により異なります。


【結論】 本以外でも売れるモノを考える



◆キーワードその2 個性を見つめ直す


「書店」を「人の集まる場(空間)」として捉えるだけでは収益は上がりません。その場を活性化させ続けるための努力・情熱も合わせ持たなければ「本屋としての空間販売」は成立しません。


ここで挙げた16の書店は、どれも個性的です。普通の「街の本屋さん」からの脱却は収益を上げるためには必要不可欠です。


ここでいう「街の本屋さんの個性」とは、すべて「店主の個性」と言うことに尽きます。書店オーナー、書店主に個性・こだわり・(本屋地域に対する)思い・趣味や世界観がなければ、ビジネスは上手く行かないと思います。


ですから、「どんなイベントをするか」の前に、何をおいてもまず、「書店主としての自分の個性の棚卸し」が必要です。


自分は何が好きで、何が得意で、趣味は何で、お客様に何が提供できて、どんな性格で、どんなツテ(人脈)があって、今後の新展開にどれほどの情熱を注ぐことができそうか、を見極める必要があります。見つめたことがない方はぜひ見つめてみてください。


書店チェーンとは異なり、「街の本屋さん」であり続けるためには、判で押したようなフォーマットやテンプレートはありません。テンプレートがあるとしたら、それはたった一つ、「店主の個性を生かした店づくり・経営方針で運営する」というコトかもしれません。


定有堂書店店主の奈良敏行さんは、こうおっしゃっています。


「『書店』というのは、本という商品を扱い、陳列してある空間のこと。広ければ広いほどいいし、それに合わせてサービスの質を向上させていくもの。対して『本屋』というのは人のことだ」


【結論】 自分の個性や特徴を棚卸しする



◆キーワードその3 本のセレクト眼


話が前後しましたが、「本以外で売れるモノを考える」の前に、「本屋さん」なのですから、「本」を売らないといけません。「Amazonでは買えない本を並べる」のか、「Amazonでも買えるけど、あなたのところで買いたいの」と言ってもらえる店づくりをするか、いろいろ考えるべきことはありますが、まずは本。それには「店主」のこだわり、審美眼、本の選択眼、本選びの独自視点がとても重要です。


16のうち、多くの書店では本の陳列や紹介、仕入れに独自の視点を持っています。取次からの配本を並べるだけではなく、自分の審美眼や世界観に基づいて本を揃え、独自の棚づくりを行っています。


「自分の個性や特徴を棚卸しする」際に、「こんな本を売りたい、並べたい」という自分らしいセレクト眼も見極めてください。なければないなりの経営立て直し作戦が立案できると思いますが、「俺は山が好きだから山岳系の書籍を集めたい」など自分らしいセレクト眼があるに越したことはないのです。


ちなみに「隆祥館書店」の例です。書店規模が小さいがゆえに取次に注文が通らないことがあったが、出版社の営業と直接コミュニケーションをとることで信頼関係を築き、仕入れルートを増やすことに成功したりしています。このように、やればできることはいくらもあるのです。


「B&B」では、独自の「文脈棚(ジャンル、形式にとらわれず、本のテーマや内容によって並べられた書店の陳列方法)」をつくるために、出版社・地方の取次・古書店といった複数のルートから仕入れを行っているそうです。


取次の配本に依存せず、販売したい書籍を仕入れることができるか。これも成功の一要因です。


【結論】 本選び(仕入れ)に独自の視点と努力を



◆キーワードその4 地域に溶け込む。地域と共生する


16のうち、多くの書店では「地域」との関わりを重要視して経営が行われています。ネット販売で遠く離れたお客様に本やモノを売るコトも可能な時代ですが、まずは半径数キロ以内を商圏として設定し、「地元密着/地元に愛される/地元の拠点になる」などの考えが欠かせないと思います。


「街の本屋さん」としての利用価値(機能)を「街にある本を買える場所」以外にも創出する必要があります。例えば


  • 街のみんなの集合場所=待ち合わせにピッタリな空間

  • 街のイベントスペース=頻繁にイベントが行われている(イベントとして利用価値が高い)

  • 飲食可能な街の休憩所=ちょっとした休憩場所に使える

  • 街の情報集積所=街の情報が集まっているので、便利

  • 街の歴史図書館=街の歴史がわかる書籍が揃っている(調べることも、買うこともできる)

などです。


なかでも「イベントスペース」としては、書店主の趣味に沿った自主的なイベント以外に、その街に暮らす人、その街で商売している人に有益な場所となるようなイベント開催ができると、さらに必要とされるので良いと思います。


書店主の趣味に沿った自主的なイベント例)

読書会、古書販売会、作家を独自で招聘してトークショー(小規模でアットホームな作家を囲む会)など


その街で商売している人・暮らしている人たちとのコラボイベント例)

大工さんの工作教室、カメラマンの撮影教室、かばん屋さんの新作発表会、新作絵画展示スペース、パソコン教室、スマホ教室など。


それぞれのイベントでは、関連した書籍をピックアップして陳列すれば書籍販売につながります。


【結論】 手始めの商圏は地域。半径数キロ。 

「本を買える場所」以外の「場所機能」を考え、使っていただく



◆キーワードその5 ファンをつくる


16のうち、多くの書店には、たくさんのリピーター、上顧客がいるはずです。ここでは、一概に「ファン」と呼びたいと思います。


このファンを生み出す、つくりだすための努力もとても大切です。会話、コミュニケ―ションもそうですが、「どうしたらファンになっていただけるだろうか」を常に考えて経営する必要があります。


その書店のファンをつくるには、第一に「この本屋(の店主)が推薦する本だから買う」という、顧客の信頼を獲得し、その輪を広げていくことです。ネット書店にもナショナルチェーンにもできないことのひとつがこの部分です。


書店主あるいは書店そのものが(店主の趣味や世界観によって)特殊なキュレーション機能・リコメンド機能を持つことは、街の本屋さんの繁栄には欠かせないことです。上で述べた「キーワードその3 本のセレクト眼」の部分とリンクする部分です。


【結論】 お客様には「ファン」になっていただけるように



◆キーワードその6 継続は力なり


16のうち、多くの書店が結果を出すまでに時間を費やしたはずです。トライ&エラー(今風に言えばPDCA)を繰り返し、いまの成果、状況をつくりだしたに違いありません。


できるだけ早く結果を生み出したいのは皆同じ。ですが、我慢して継続しましょう。逆に言えば、無謀な計画を立てない、初期投資を膨大に掛けない。続けられる計画を立てる。小さくスタートさせて、小さく成功を積み重ねていくのが成功への近道ではないかと思います。


【結論】 小さくスタート、小さな成果。それを積み重ねる




いかがでしたでしょうか。MRDの考察。


第三者視点で分析し、本屋さんに求めるものを列挙してみました。


「こんな本屋さんだったら行きたい」「あそこの本屋さんは面白い」とお客様に興味・関心を抱いてもらえる本屋さん。ぜひ参考にしてみてください。


「本」が運んでくる楽しさは昔も今も変わっていないと思います。多くの方が語っているように「本の定義」や本を取り巻く生活者のライフスタイルが変わっただけ。


年号が令和に変わっても街の本屋さんは昭和の時代から暮らしに欠かせない地域資源です。楽しく明るく、生活者・地域とともに三方よしの繁栄を築いていければと思って止みません。


もしよろしければ、MRDにお声掛けください。取材をさせてください。ヒアリングさせてください。


本のプロではありませんが、ご協力できるコトは色々あると思っています。手弁当でお手伝いできる範囲は無限ではありませんが、少なからずお役に立てると思っています。


課題解決のために、伴走できたら幸いです。(おわり)

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